【完】キミがいた夏〜Four years later〜
三池を見ていた美鈴が驚いたように、再び俺に視線を戻す
「橘せんぱ…」
「ママ、アサミさん借ります」
俺は美鈴の言葉を遮ると、美鈴の腕を掴んだまま立ち上がって店の扉の方へ引っ張って行った
「───ちょっと!?」
抵抗している美鈴をお構い無しに引っ張っていたから
当然、扉の近くにいたさっきのオールバックのボーイに止められると思った
なのに、ボーイは俺を見ても近づいてくる気配もない
それどころか直ぐにそのアンティークの扉を開けて出ていく様に促した
「…?」
当たり前の様に三池すら追ってくる気配はない
出ていく瞬間、カウンターを振り返ると笑っているママの顔が見えた気がした
来たときといい…何だっていうんだ?
俺は釈然としないながらも、足を止めることなく歩いて行く
「橘先輩!」
「……」
「離して!私は仕事が!」
美鈴は掴まれた腕に力を込めながら抵抗していたけれど、俺は今度は美鈴の体ごと引っ張って、車を止めているパーキングに向かって早足に歩いていた
そしてパーキングに着いて素早くお金を払うと、美鈴を助手席に押し込んでロックをかけた