【完】キミがいた夏〜Four years later〜
運転しながチラリと美鈴の方に目を向けると、美鈴はネオンで煌めく窓の外の街を見つめていた
「あの時もこうやって私を教室から強引に連れ出して…」
その顔をカーウインドウが写し出す
それは三池と同じ虚ろな瞳
ああ…思い出した…
『あの時』というのは、美鈴に変な噂が持ち上がった時に俺が美鈴の教室まで行った日のことを言っているのだろう
「橘先輩はいつだって強引だった…」
美鈴の語る昔話は、おとぎ話のように遠く霞んで聞こえた
この4年間に彼女に何があったというのだろう
美鈴は何かを振り払うように顔を左右に振ると、俺の方を向いて再び口を開いた
「どこに向かってるんですか?」
「……」
今日、再びキミを手に入れることの出来る場所
そう言ったらキミは何て言うだろう?
「橘先輩はいつからそんなに無口に?」
黙り込んだ俺を見て、美鈴が珍しく楽しそうにそう言葉にする
だから俺は思わず意地悪したくなったんだ
「…美鈴がいなくなってからだよ」
そう言って微笑むと、美鈴は戸惑った表情で窓の外に再び顔を向けた