【完】キミがいた夏〜Four years later〜
そしてそれからお互い、一言も何も口にすることはなかった
それは沈黙を楽しんでいるようでもあり、居心地の悪いモノではなかった
免許をとって美鈴をいつか助手席に乗せたい
夢は叶ったのだろうか?
いや、これ自体まだ夢の中なのかもしれない
睡眠薬で眠っている間だけ見れる幻なのかもしれない
それならば、好きなようにさせてもらう
暫くして、目的地に到着すると俺はシートベルトを外して車から降りた
そして助手席に回り込み、不安そうにキョロキョロしている美鈴の腕を再び掴むと、車から引っ張り出した
「ここ…どこですか?」
「行けばわかるよ」
「でも…」
「もう少し一緒にいて」
「……」
半信半疑な彼女を連れてエレベーターに乗り込むと、俺は6階のボタンを押した
「夜景でも見るんですか?」
「…ふっ、確かに見えるかも」
「…え?」
美鈴のとぼけたような顔
美鈴こそ鈍いのは相変わらずだ
そしてそれは俺の心を見事に掻き乱してくれる
ポーンッ──────‥‥………