【完】キミがいた夏〜Four years later〜
美鈴は目の前の景色を見て固まっていた
「…ここっ…」
それだけ言うと下を向いて押し黙ってしまった
俺は車を止めて表へ出ると、助手席側に回ってドアを開ける
「出て」
それでも美鈴は出てこようとしない
「行こう」
「嫌です」
「大丈夫だから」
「無理です!」
スカートを両手でギュッと握りしめ下を向いて、出ることを全力で拒否している美鈴
俺はそんな美鈴の腕を掴んで無理やり車から引っ張り出した
「やだ!離して!」
「美鈴──!」
俺は暴れる美鈴の両腕を引き寄せて自分の腕の中に閉じ込めると
美鈴の頭を自分の胸に押し付けて、もう一方の手で美鈴の背中をポンポンと子供をあやすように軽く叩いた
「大丈夫…大丈夫だから」
「…っ…」
美鈴の強張っていた体の力が抜けていくのを感じる
美鈴がこうなるのをわかって今日ここに連れて来たんだ
これは一種の賭けた
でも小さな望みでも全て試しておきたい
「おー?渚かー?」