【完】キミがいた夏〜Four years later〜
俺は柔らかに海に向かって微笑む美鈴を見ながら、いつか美鈴がここで語っていた夢の話を思い出していた
『お母さんという存在になりたい』
美鈴は確かそんなことを言っていた
目の前の美鈴は、正にこれからそれを叶えようとしている
相手は俺じゃなくても
美鈴の夢はそうやって叶って
それが美鈴の幸せに変わって行くのだろうか?
美鈴はいつしかまた自分の足に顔を埋めて膝を抱えて泣き出していた
色々な思いが涙と一緒に溢れ出すように
「ごめ…止まらない…」
小さな子供のように泣いていた
高校生の時のことを思い出しているのだろうか
それとも自分のいなかった4年間を思い直しているのだろうか
俺もトビーさんも都さんも、そんな美鈴を静かに見守った
たくさんの募る思いがあるはずだ
誰もがそれを感じて、美鈴に声を掛けはしなかった
いや…
どう声を掛けたらいいかわからなかったのかもしれない
でも海だけは違った
海はそんな美鈴を戸惑ったように見ていたけど、すぐにスカートの裾を引っ張って美鈴に何かを差し出した