【完】キミがいた夏〜Four years later〜




彼女がいなくなった後、もちろん四方手を尽くして探し回った



けれど着の身着のまま出ていった人間の消息を掴むことは容易いことではなかった



彼女が1人で出ていったとは考え難い



きっと彼女は父親に付いていったのだろう



あの日見た彼女の住んでいた家がそう教えてくれるようだった



彼女もあの無惨な自分の家を、どのタイミングかわからないけれど目にしたのだろう



借金取りから逃げるように身を隠して生きている人間を探すことは



普通で考えるよりも困難をきわめた



そして彼女と過ごした時間よりももっと長い年月が流れるごとに



もう彼女と過ごしたあの夏が
夢の中の出来事のように、記憶の果てに失われていくような恐怖



けれど瞼を閉じれば
鮮やかに彼女の笑顔浮かぶ



そんな彼女の儚い残像を手繰り寄せて、俺は今日も何とか生きていた




「渚」



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