【完】キミがいた夏〜Four years later〜
美鈴はそんな俺を見て少し目を見開くと、すぐに視線を外した
そしてそのまま何も言わずに俺の目の前に立つと、何を話そうか思案するように唇を少し噛んだ
昔からお喋りな方ではなかった美鈴だから、こんな風に沈黙することはよくあったけれど
今のように重苦しい空気になったことは一度もなかった
開店前ということもあって、エアコンの音だけがやけに耳につく
前回のようにカウンターの離れた所で座ったママが燻らせるタバコの煙
その香りでボンヤリとしていた頭が現実に引き戻されたように、俺は美鈴に静かに話しかけていた
「この間はちゃんと話せなかったから…」
美鈴は相変わらず顔色ひとつ変えずに下を向いていた
「いや、どうしてもまた逢いたかったってのが本音だけど」
その言葉を聞いて顔を上げた美鈴の視線と視線がぶつかった