【完】キミがいた夏〜Four years later〜
俺に見えるように向けられた手の甲
その薬指には、小さいけれど存在感のある小さな石をあしらった指輪
そしてさっきとは違う落ち着いたトーンで美鈴はその言葉を口にする
「私、結婚するの
幸せになるのよ?」
俺の目の前が真っ暗になっていく
「……誰と?」
「………」
相手を聞くのは愚問なのかもしれない
そんなのは一人しか心当たりがない
けれど…信じたくはない
「橘先輩がいつか言ったでしょう」
美鈴の声が遠くに聞こえる
「私にはヒロヤが相応しいんだって」
欲しいものは何時だって一つなのに、その一つがどうしても手に入らない