ナガレの騎士 ~光の竜と呪いの姫~
---------
ピアスの察した通り、少女の家は森からすぐ近くの所だった。
小さな村ではあるが豊かな暮らしのようで、
紛争にも災害にも巻き込まれたことがないという。
家に入ると誰もおらず、
辺りを観察しようと見回っていたら、
少女がトレイにカップを乗せて運んできた。
「お茶だけど・・どうぞ」
「そのような・・・お構いなく」
「いいえ。さっきは、すみませんでした」
制するシャーロットに、苦笑する少女。
どうぞ、と手を差し出していて、それを見ていたら。
「ほう・・・これは、見たことのない色だ。
このあたりでしか飲まれないものかね?」
「旦那様・・・・・」
「人がせっかくしているそばから、
なんてだらしない主人なのだ」。
じろりとした視線がそう物語っていた。
プルートはその視線に動じることもなく、
おいしそうにお茶を口に含んだ。
「プルート、味はどう?」
「上品な味だな。
この村ならではの、素朴な味だ」
満足そうに笑んだプルート。
俺も、隣に座る。
ティティがするん、と俺の膝に乗り、
テーブルへと身を乗り出す。
そしてカップと一緒に置いてあったクッキーを
おいしそうに口に放った。
俺はその光景を微笑みながら見つめ、息を吐いた。
「それで、そのアンジュっていうのは?」
「・・私は、ミクリといいます。
私たちが住むこの村はとっても平和で、
普段は怪物やモンスターがやってくることもなく、
食べ物に困ることもないんです」
「・・ですが1週間前、
私が森に食料を取りに行っていた時・・、
アンジュが現れたんです」