ナガレの騎士 ~光の竜と呪いの姫~
「・・もの好きもいるもんだな。こんな奴に手紙を出すなんて」



「心外だな。俺は一応、相手は選んでやってるつもりだけど?
まぁ犯罪とくくってしまえばそれまでだけど、一応悪事を暴いているだけで」



「結局盗んでたら同じ事だろ。悪趣味だ」



「おまえはいちいち言う事が固いんだよ。そんなこと言ってたら何にも出来ないし。
仕事の報酬を見合う分だけもらってるだけだろ?」


「・・だからそれが悪いつってんだろ」






はぁああーっと息を吐くティティの悩みは尽きない。
その横でにこにこと変わらずピアスは笑うだけ。










--------- ピアス・リリー --------






裏の世界ではその名を知らぬものはいないだろうと言われるほどの大泥棒。
変装のプロで、これまで化けてきた人の数は数知れず。
このようにして名前を覚えてられないほどの他人を名乗る事もしばしばだ。
人をだます事を生業として生きている分仕方のない事ではある。





ただしいつぼろが出たらどうするのかと気が気ではないティティ。
主と呼べるほど身命を捧げたわけでもないが、
自分の命運を握っている事は確かなのだから
もう少ししっかりしてほしいものだと思う。




ぐううーっとティティも伸びをするとするっとピアスの腕を抜け出す。
すると途端つまらなそうな顔をする。






「なんだその顔」
「もうちょっともふもふしたい」
「・・ガキか、おまえは。俺はクッションじゃない」
「ティティは俺のペットだろ。好き勝手したっていーじゃんかよ」
「・・ペットになった覚えはない」




付き合ってられっかよ・・・とやれやれというふうに
首を振ってどこへなりと歩きだす。



と、




「今しかできなくなるかもしれないのに?」




「は?」






振り返れば彼は笑っているだけ。手に持っている手紙が目に入る。





「・・・・どういう意味だ」




「だから、そーいう意味、だよ」





振り返った彼ににこ、とピアスは笑っておいでおいでをする。
それを見たティティは露骨に嫌そうな顔をするも、
しぶしぶといった感じでソファより少し離れた所に座った。



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