ひきこもり女学生の脳内断面図
「か、加藤先生・・・?何してるんですか」
私とお姉ちゃんは二人揃ってぽかんと口を開けていた。さすがに相手が加藤先生だとわかると、これは浮気ではないと即座に判断したのだ。
そんな私たちを「なんのこと?」といったような目で、加藤先生と母は見つめている。
おかしな空気がしばらく辺りを包んだかと思うと、母の第一声がすぐにその空気を破った。
「あんたたちこそ、こんなとこで何してんの」
「やばい」と顔を見合わせる私たち。無論逃げ道などここには存在していない。
「・・・いやぁ。ちょっと外の空気を吸いに」
気まずさでいっぱいの私は、あえて母の目を見ずに答えた。我ながらかなり強引な言い訳だと思う。
「外の空気吸いに千宿まで来たって言うの。へえ・・・」
母の声は、恐ろしくそっけなかった。娘ながらに、身震いがしそうで仕方ないくらいである。
次の瞬間、母は私からお姉ちゃんのほうへ目線をずらした。何だかまがまがしい妖気を発しているようだ。
お姉ちゃんのほうからあからさまに「ギクッ」という効果音が聞こえてくる。私と同じように彼女も視線をそらしたが、時すでに遅し、である。
「さてはミキ、あんたね。母さんの様子がヘンだとか言ってアキのこと言いくるめて、私のあとをつけてきたんでしょ」
「は、このあたしがカワイイ妹のこと、言いくるめるとでも思ってんのかよ」
お姉ちゃんはそう言って、白々しくごまかした。ごまかせていないということなんて、その場を目にすれば一目瞭然である。