ひきこもり女学生の脳内断面図






店内に潜入すると、さっそく美容師に声をかけられる。まあそんなことは当然なのだが。






流れているクラシックが心を揺さぶるように心地よい。






「いらっしゃいませ、初めての方でしょうか」





「あ、ハイ」






私がうなずくと、その美容師のお姉さんはにこっと笑った。なんとも愛らしい笑顔である。






「学生さんですね。カットのみでしたら割引がききますが、今日はどうされますか」







学割とは、以前所持金が21円の私にとってはありがたい。







確かに長すぎる髪、とは普段から思っていたこのロン毛。







3センチくらい切るかと思った私は、再びそのお姉さんの顔を見るとうなずいてみせる。







「カットですね、かしこまりました。それではあちらの奥の席にどうぞ」






どの人がカトウさんなのかしら。







加藤先生と同じ名字を名乗る麗しいその人を探しながら、私は案内された席に座った。







いつだって私の頭の中には、加藤先生だけなのである。
















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