ひきこもり女学生の脳内断面図
加藤先生への恋心が麻痺したように思えたのは、結局髪が短い自分は自分でない、という自分の心が不安定になったことが原因だったのだろう。
奇人が舞い戻るのも、時間の問題である。
原因がわかって安心した私は、そのまま電車の中でもかまわずにすうすうと寝息を立てて寝ていた。
そうして千宿から出た地下鉄は、予備校の最寄り駅にもう一度到着する。
私の降りる駅はもう少し先なのだが、電車はいったん六ツ谷に停車した。
ずっと寝息を立てている私の隣の席が空き、六ツ谷駅から乗車してきた男性が、私の隣の席に座った。
「・・・あれ、春川さん?」
彼は驚いたように隣で寝ている私を見て、首をかしげている。
こういうタイミングの時に限って、なぜ私は寝ているのだ。
愛しの加藤先生が乗車してきたというのに。全く恐ろしい偶然である。