ひきこもり女学生の脳内断面図
「次は青原町、青原町です」
車内のアナウンスが流れると、先生はふっと電車内の電光掲示板を見ていた。
次の駅で降りるのだろうか。
何も知らずに眠りこけている私の顔を覗いた先生は、背広のポケットから何かを出そうと探しているようだ。
ポケットから再び現れた先生の右手には、先生の顔からは想像もできないキャンディーが。
ありがちなイチゴ模様の包み紙のキャンディーを手にした先生は何も言わずに、そのキャンディーを私の左手の中に握らせる。
夢の中で加藤先生と手をつなぐ私。この時確かに現実では先生の右手が私の左手に触れたのであるが。
私にとっては夢が現実で、現実は偽物と言う意識があるのだろうか。
そうして電車が駅に着くと、先生は私の首が倒れないようにそっと立ち上がった。
そうして改めて私の方を振り返ると、いつものようにおぞましい笑顔を添えて言う。
「元気出してな」
私に聞こえないとわかっているのだろう。先生はそう言うと、出入り口のドアの方へ向かって電車から降りた。
意識があったら鼻血が吹き出るほどの出来事が、ここで起こったのだ。