ひきこもり女学生の脳内断面図
「アキちゃん・・・なんか別の呼び名ないかな。「お兄さん」じゃちょっと恥ずかしいよ」
「あっ・・・すみません気がきかなくて。なんて呼べばいいですか」
「『橋本優太』だから・・・橋本さん、とかでいいよ」
「優太さんじゃだめですか?」
私がそう言うと、彼はちょっと恥ずかしそうな顔で笑った。
「いいよ。それより久しぶりだねえ。今日はお買いもの?」
「ううん、見ての通り!」
私はふふふっと笑いながら、自分の服装を指差した。いつも通りの学生服。
まさか加藤先生の気を引くために実行したが失敗した「加藤先生、アキのセーラー服姿どうですか?」作戦で着たこの服に、自分がここまでハマってしまうとは。
私の意図を読み取ったであろう優太さんは、さらに嬉しそうに言った。
「ああ、例の先生のとこに行く日なんだね。うんうん可愛い可愛い」
「えへへ。そうですか?照れちゃうじゃないですか・・・」
今日の私がこんなに女の子らしくいるわけは、言うまでもなく今日がバレンタインデーだからである。
バレンタインデーという魔法にかけられた私は、いつもの変人ぶりはどこへやらすっかり恋する乙女になりきっている。