ひきこもり女学生の脳内断面図










そんな話をしながら、私たちは園内をゆっくり進んだ。









やわらかい春の風がどこからか吹いてきて、その気持ちよさに眠くなりそうだ。











屋台のチョコバナナを横目に通り過ぎ、「後で食べよう」と決心をする。










相変わらず能天気な私の横で、ジローはきょろきょろと辺りを見回している。









「どの辺が一番きれいかな・・・」








「チョコバナナ・・・おいしそ」









「よそ見してないでお前も探すの手伝えよ」









「いや、チョコバナナおいしそうだよ」









はたから見たら、頓珍漢なカップルに見えているかもしれない。もしかしたら恋人同士ではなく、兄妹に思われているかもしれない。








「おい、ぶつかってはぐれるなよ」






「ごめんごめん・・・」









ぼんやりと謝った私にスグルは、








「・・・しょうがねえな。あとで買ってやるよ」








「本当に?やったー!」









ぶっきらぼうにそう言ったかと思うと、彼は私の右手をぎゅっと握った。男にしては少々握力が弱め・・・










「わ、わわわわ!ちょっと!なんだいこの手は。離しなさいな」









「何今更照れてんだよ。変な奴に連れてかれて困るのは、こっちなんだから」









こうして私はおとなしく、スグルに手をひかれて歩いて行ったわけだ。















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