ひきこもり女学生の脳内断面図










その日は電車に乗っているときも、夕飯を食べてる時も、お風呂に入っているときも、頭から離れないのは加藤先生ではなく、あの男のことだった。









相手が不機嫌だったとはいえ、言い過ぎた私に意外にも冷静に受け答えた様子。









平静を保っていたけど、明らかに私の言葉に動揺していた。というより、私の言葉があまりにも相手の核心をついてしまったみたいだった。




















日付は変わって、午前1時。私は一人部屋の中から、ぼんやりと真っ暗な外の景色を眺めている。








光のささない夜の街は、あと1時間で日が昇る朝方なのか、夜が更けこんでいく真夜中なのかはっきりと区別ができないほど真っ暗だ。









私は軽く息を吐くと、荷物の中から一本のペンを取り出した。








そのペンは昨日の夕方、あの男と言い合いになったときに人質に取った万年筆。







人質に取ったまま、持って帰ってきてしまったのだ。







ただのシャープペンか何かかと思ったら、案外しっかりしている高価な万年筆。相当年季のこもったもののように見えたのは、私の考え過ぎか。









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