ひきこもり女学生の脳内断面図
「・・・・」
私も言葉が見つからなかった。彼も黙ったままである。気まずい空気に、私の心はドキドキ状態である。
そこでようやくあのペンの存在を思い出した私は、
「そうだ、こ・・・これ。返そうと思ってて・・・」
そう言いながらリュックの中から、例のペンを取り出した。
「ご丁寧に袋に入れるなんて。ありがとよ」
「大事そうだったから・・・ごめんね、勝手にもってっちゃって」
私が言うと、男は言った。
「大事そうだってわかったのか・・・お前、名前は?」
「は、春川って言います。そっちはなんて言うの」
「北條傑。9月11日生まれのA型。二十歳で浪人二年目。ちなみに医学部目指してる。好きな動物は犬」
聞いていない情報が山ほど戻ってきて、思わず私は吹き出した。案外面白い人なのかもしれない。
「あ、あのさ・・・」
「なんだよ」
「ジロー君って呼んでもいい?」
私の唐突な切り出しに男は顔色を変えることもなく、言った。
「いいよ。二浪目だからひらめいたんだろ、その名前」
見透かされた私はいどころのない恥ずかしさに襲われたのだ。こう見えて中身は乙女なのである。