ひきこもり女学生の脳内断面図






「じゃ、約束通り。内緒だからね、店長にばれたら怒られるから」







「わぁい!ありがとうございます」







彼は私の手からさっとホットケーキミックスの袋を取り上げると、慣れた手つきで機械からシールを一枚貼ってくれた。







金欠乙女に、20円引きはありがたい。







「今日はこの時間にいらっしゃるんですか?」






私の問いに、彼はこう答えた。







「今日はヘルプでこの時間なんだ。今日だったら大学の講義も休みだからね」






大学生。どおりで若いわけだ。






そう言いながら、彼は私にホットケーキミックスの袋を渡して、にっこりとほほ笑んだ。







「よかったよ、また来てくれて。おいしく作れるといいね」








そんな彼の言葉は、まるで加藤先生本人が言っているかのようなリアルさだ。







外見の威力というのもまた、すさまじく現実を狂わせる。







真っ赤になった顔を見せたくない私は、自分のつま先をしばらく見つめていた。
















< 55 / 303 >

この作品をシェア

pagetop