ひきこもり女学生の脳内断面図
「ああ、ここは惜しかったね。ここの単語の意味、わかる?・・・うんうん、そこはあってるよ。難しいけどよく覚えられてるね」
他の生徒を教えてる、先生の潤いに満ちた爽やかな声。
加藤先生の声が聞こえる半径5メートルは、まさに空気の潤いがハンパない。
先生の声を乗せている空気さえもが、その愛しさに振動して喜んでいるかのようだ。
空気も喜んでいるくらいなのだから、当然私もとろけきった顔で泥酔に近い状態なわけだ。
声を聞けるだけでも、幸せなのだ。
恋をしたおかげで、私の現実は変わり始めているようだ。
正確には「現実をひね曲げて妄想の世界に作り替えている」と言うことなのかもしれない。
そもそも幸せであることに妄想も現実も関係ないのではないか。そうだろう、そうなのだ。
私の恋は、こういう形をしているのだ。