ひきこもり女学生の脳内断面図
「だからね、ここはこうなって・・・えーと、何ページだったかな・・・あ、ここだここだ。ここ見るとよくわかるから」
「ハイハイハイハイ」
日本史の説明にいっぱいになっている先生を眺めるのも、また彩りの一つだ。
いちいちウルサイ「あーでこーで」を繰り返していたとしても、天使の歌声なのだからこんな時は素直に聞く気になる。
勉強は嫌いだが、加藤先生が教えてくれるなら下水掃除だって喜んで引き受ける。
好きな人がいれば、細かいことはどうでもいい。全てが繊細に見えるレンアイだって、案外大雑把な部分は多いはずだ。
経験のある人ならわかると思うが、恋なんてそんなものだろう?
私はただうなずきながら、参考書を見る「フリ」をする。
そうして「フリ」をしながらポケットからくしゃくしゃのハンカチを出して鼻水をかんでいる先生の姿を、うっとりと眺めるのだ。
先生のハンカチになりたい、と言う変態発言はいつも通り胸の奥へ直行。
もちろんそれは一瞬の出来事であり、先生は気付いていない。これだから恋と言うものはスリリングなのだ。
もっともっと、先生に近付きたいのだ。ただそれだけなのである。
恋に難しい理屈なんて、本当に必要であるか?