ひきこもり女学生の脳内断面図
一瞬のしぐさを、見つめる。
小心者の私にとって、この作戦は比較的実行しやすいものだった。
仮に麗しいしぐさを目の当たりにしたところで、目をそらせばいい。
ときめきは一瞬だけ、胸の奥の格納倉庫へ。そうして授業が終わった後で電車の中か何かで格納倉庫の扉を開き、妄想に浸ってにやける。
それには「ときめきが抑えられる程度」と言う条件があった。
つまり、先生のかっこよさにときめいた私の脳内が、ある程度興奮を抑えられなければ、格納倉庫への保管は難しい。
いちいち前置きが長くなったが、とりあえず一瞬のしぐさにもときめいているということだ。
頭でっかちな私をよそに、平常心を取り戻した私はとりあえず目の前の先生に視線をずらす。
次の瞬間、私の理性は滝壺に落とされた。目を疑うような現実に、私の中で全ての時計が針を動かすことを止める。
先生がさっき鼻水をかんでいたタオルハンカチで、メガネのレンズを拭いたのだ。
衛生面の問題が気になるがしかし。
読者のみなさん、これが一体どういうことかわかっていただけるだろうか?
加藤先生が私の前で、メガネを外したのだ。