彼のぽけっと
まだしわの少ない新しい制服から部屋着に着替えたミユは、母へ携帯の話をどうやって切り出すか考えていた。
高校へ入学するのに、教科書代や制服代などかなりの出費を知っている。
父親とはミユが五歳の時に別れ、女手一つで三人の女の子を育ててきた母。その苦労をミユは一番見てきたとも感じている。
高校までは通えないだろうと思っていた中、就職に苦労しないように少しでも…と入学させてくれた。

「別に今すぐに必要でもないし。」


考えがまとまった。
めぐとの登録第一号の約束だって、破るわけではない。

ミユは、今夜の夕飯であろうカレーの匂いのする今へと階段を降りた。


「ミーねぇちゃん、学校どうだった?」

次女(中学2年生)のはるながまっさきにミユへと駆け寄る。

「まだ、入学式しただけだからわかるわけないじゃん。でも、楽しくすごせそうだよ。ほら、はるな食器出して私ごはんもるから。」

はるなは、いやな顔せず「はぁい」と楽しそうに食器棚の扉をあける。
テーブルの上では三女(少学6年生)のミキがお絵かきをしている。

「ミキも、そこ片づけてね。運ぶの手伝って。」

ミユは長女。


私がわがままなんていってられない。
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