カセットテープ
「…もう一回」
「え?」
「もう一回、言って」

うわ…。
あんな恥ずかしいこと言うんじゃなかった。

「ヤダよ。
聞こえてただろ?」
「聞こえなかった」

お前の笑顔はもはや凶器だな。
そんな顔で言われたら…、
言うしかねえじゃねえかよ。

「だから…、
俺は…」
「俺は?」
「あー、言うのやめた!」
「何で?」

無理だろ…。
あんな恥ずかしいこと言えねえよ。

「また、明日会うんだから、
明日までお預けな」
「えぇ〜!?
さっきは言えてたのに」
「もう言えない」
「じゃあ、明日、絶対だからね!」
「あぁ。絶対だ」

…これで、また咲織に逢える。
確かに、卒業したらいつ逢えるか分からない。
だから、今のうちに、
一緒にいておきたい。
本当は…、理由なんてなくても、逢いに行きたいんだけどな。

「じゃあ、また明日ね」
「あ、家まで送ってこうか?」
「ううん。
今日は塾なんだ」
「…そっか。
頑張れよ」
「うん」
「あ…、それと」
「何?」
「明日は大事な話があるんだ」
「大事な話?」
「ああ」

そうだ。
さっきは言えなかったけど、
やっぱ明日なんかじゃなく…、今。

「だから、言えないかもしれないから、
今言っておく」
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