ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
あ、歯磨いてない。
コンビニの袋の中にあった歯ブラシを見て、今更になって思い出す。
まだナツは出てこないだろうから大丈夫か。
そう思って、俺は歯ブラシを持って洗面所へ行った。
そーっと洗面所を覗いてみると、まだナツが出てないことが分かった。
チャポンという音が聞こえて風呂の方を見てみると、シルエットでナツが浴槽に浸かってるのが分かる。
なんか、逆に残念だな。
漫画みたいなお風呂でばったりとかあればいいのに……
とか、そんな淡い期待をしていた俺は、ちょっとがっかりする。
いいけどさ、別に。
俺はいつもより念入りに歯を磨いて、いつもより念入りにうがいをした。
洗面所に置いてあるコップに、ナツのピンクの歯ブラシが入れてある。
俺はその中に俺の歯ブラシを入れた。
うん。ピンクと青。ナツと俺。いい感じだ。
何度も角度を変えて見て、頷いた。
その時、カチャっと音がして熱気が漂ってきた。
ふと見ると、風呂場の扉が開いて、白い湯気が流れてくる。
そこから、濡れ髪、濡れ全裸のナツが出てきた。
バチッと一瞬で目が合った。
「……っ! きゃあぁぁー!」
ナツは顔をひきつらせて、悲鳴を上げ、勢いよく中に引っ込んだ。
「うおっ!?」
俺はその悲鳴に驚いた。
「何でそこに居るの!?」
風呂の中からナツの声が聞こえた。
「何でって……歯ぁ磨いてて……あ! 別に覗こうとしてたわけじゃねぇよ!?」
俺はあらかじめ弁解しておく。
そりゃあわよくばとは思ったけど、確信犯じゃない。そんな誤解されるのはごめんだ。
「……みっ見た!?」
「へ?」
「あ……あたしの……」
ナツの声が恥ずかしそうに小さくなる。
あぁ。裸か。
「大丈夫だよ。一瞬だったし、見てないから」
俺はそう言っておく。
嘘だけど。
本当は、一瞬だったけど、上から下まで全部見た。
ナツは油断してたのか、隠してなかったし。
「じ……じゃあ早く出てって! あたし、服着るんだから!」