ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「あ、これはどうですか?」
おじさんがファイルをめくる手を止めて俺にそこを見せた。
「部屋自体はそんなに広くないですけど、一人暮らしなら十分なぐらいだし、五年前に出来たから新しいし、場所もお客さんの希望通りだし」
「マジですか?」
おじさんの言葉に俺は食いついた。
見せてくれた物件は、ナツのコーポから十五分ぐらいで着けそうな場所にあるマンションだった。
写真を見てみると、写りによるのかもしれないけど、それでも十分綺麗だ。
間取りも、ちゃんと風呂とトイレは別になってるし、別に不具合はない。
いや強いて言えばナツの部屋より狭そうだけど……そこはしょうがない。妥協する。
「ここでお願いします!」
と、いうわけで、俺はなんとか一人暮らしのための第一歩を踏み出すことができたのだった。
そしてその一週間後。
マンションへの引っ越し日。
「おぉ! すっげー。思ったよりキレイじゃん」
部屋の中に入って、俺は思わず一人でそう言った。
でも、本当に築五年目ということもあってか、壁は真っ白だし床はピカピカだし新しい匂いがする。
もしかしたら、この部屋は俺が一番最初に使うのかもしれない。
やっぱり家賃ギリギリまで上げてよかったかも。
……て、そんなこと考えてる場合じゃなくて。早く荷物運ばねえと。
引っ越し業者に頼むと、金がかかる。ってわけで、俺は自分で荷物を運ぶことにしたのだ。
まさかこんなとこで家賃のしわ寄せがくるとは……
しかも、自分が引っ越したいって言ったんだから、作業は全部自分でしろって言って、親すら手伝ってくれない。
いいけどさ、別に。その通りだし。
とりあえず、家の車だけは貸してくれたから、荷物はマンションの下まで運んできた。
今後はそれをこの部屋まで運んでこないといけない。
さっさとやって終わらせよう。俺は荷物の運搬作業に取りかかった。