ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「ち……違う! ナツ! これ俺のじゃなくて……友達の! 俺、エロ本は買う派じゃなくて借りる派だから……」
俺はすぐにそれを回収し、後ろに隠した。
言い訳のつもりがあんまり言い訳になってなかった。
「……別にいいよ。どっちでも」
ナツは冷たい目線で俺を見ている。
「ナツ、誤解だって! 俺にはナツしかいないから! ナツと付き合ってからはエロ本もAVも一回も見てないし!」
「だからそんなの言わなくていいってば」
「ナツー! 信じてくれよぉ」
何だかもう冷え切った感じのナツに、俺は抱きついて必死に訴えた。
「俺、マジでこんなんに浮気しないから!妄想と手だけで十分だから! つうか、これ借りたの大分前だし」
「だから気にしないからいいってば! 何そこまで言ってんのよ!」
ナツは真っ赤になって俺の腕の中でじたばたしてる。
「て……旬。大分前に借りたのにそれが何であるの」
ナツはピタリと止まって真剣な顔で俺に言った。
「返したつもりだったんだけど、今発掘されたんだよ。俺だって久しぶりに見た」
「……旬。人に借りたものをそんないい加減にしてたらだめじゃない」
呆れたような口調でナツは言った。
「うん。今度ちゃんと返しとく」
でも誰に借りたんだっけ?
そう思いながら俺は頷いた。
ナツはその後エロ本のことには一切触れずに、テキパキと体を動かして、引っ越しの片付けを手伝ってくれた。
……正確に言うと、ナツがほとんどやってくれて、余計なことばっかした俺は怒られてばっかりだった。
でも、昼には大体片付いて、二人でナツが持ってきてくれた蕎麦を食べた。