ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~


 そうやって何だかんだと話して、三十分ほど経った時……


「そろそろ出ようか」

 ナツが時間を見てそう言った。


「ああ、うん」

 俺は頷いて椅子から立ち上がった。


 あ、そうだ。伝票……


 思い出してそれを取ろうとした。でも、テーブルの上にはもうすでになかった。


「あ……」

 ナツがいつの間にか伝票を持ってレジへと向かっていた。


 行動早いよ、ナツ。


 俺は急いでナツを追いかけた。



「千三百三十円になります」


 店員がそう言って、ナツは鞄から財布を出そうとする。



「俺が払う」

 ギリギリで言うと、ナツは俺を振り返った。


「いいよ、これくらいだし」

 しかしナツはそう言って、財布を出そうとする。


 いつもそうだ。俺が出すって言ってもさっさと出してしまう。


 でも、今日はそうはさせない!


「これくらいだから俺が全部払う」

 俺はナツの手を押さえた。


「いいってば。旬、お金ないんでしょ?」

 それでもナツはそう言って、俺の手を押しのけようとする。


「今日はあるよ。一昨日給料日だったから」

 俺は言い返して、手をどかさなかった。


「でも家賃とか払ったりしたらすぐなくなるって言ってたじゃない。気持ちはすごい嬉しいから。だから手、離して」


「やだ」

 そう言えば、前にそんな話をした。

 家賃のこととか、余計なこと言うんじゃなかった。

 だからナツは俺がいつも金がないとか思ってるんだ。

< 128 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop