ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「……分かった。じゃあ旬の分だけ払って? あたしも自分の分払うから」

 ナツはため息を吐いて言った。


 でも、割り勘なんて意味がない。


「やだ。ナツの分も払う」


 俺が彼氏として、彼女のナツの分も一緒に払わないと、意味がないんだ。


「……だから旬の分だけでいいってば」

 ナツは全く頷いてくれない。


「俺が払う」

「だからいいってば」

「あ、いいって言った」

「そっちのいいじゃない! もうっ旬!」


 終いにはナツにキッと睨まれた。



「…………ぷっ」

 俺らの目の前で吹き出す声が聞こえた。

 店員の女の人だった。


「あ、すっすいません!」

 店員の女の人が謝って下を向いた。


 多分……ていうか、絶対、俺らのことに笑ったんだ。


 ふと気づくと、他の客からも注目を浴びていた。


 ナツを見たら、ナツも耳まで真っ赤にしていた。


 ナツはそのまま俺の手を振り払って財布を出し、金額丁度を置いてさっさと店から出て行ってしまった。


「ナツ……!」

 俺もナツを追って店を出た。




「もうっ! 旬のせいですごく恥ずかしかった!」

 歩きながら、ナツは何度も同じことを言っていた。


 ナツの機嫌を悪くしてしまった。

 こんなつもりじゃなかったのに……


 俺はナツに何も言えなかった。


「……旬。そんなに払いたかったの?」

 ナツは、呆れたような口調で俺に言った。

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