ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「どうしたの? 急に無表情になったけど……」

 なるちゃんがいって、俺は自分の表情に気付いた。


 思ったことが表情に出てしまったようだ。


「いや……俺の彼女、俺より年上だからさ……当たり前だけど、考え方とか俺より大人で……だからこういう時も、彼女がすんなり許してくれるから、喧嘩にならずにすんでるっていうか……」


 これは、ずっと不安に思ってきたことだ。


「俺、ただでさえ年下だからさ、彼氏として恰好つかないのなんてしょっちゅうだし、今回みたいに彼女がいいって言ってくれなかったら収まりがつかないし……彼女のために結局何もしてないし、できないから……情けないよな」

 俺は自分で言っててため息をついてしまった。


 本当に、情けない……

 俺がナツのためにできることって、なんなんだろ……



「あ、そうだ」

 なるちゃんが思い出したように声をあげた。


「ちょっと待ってて」

 なるちゃんは、そう言って椅子から立ち上がって控え室を出て行った。


 一分もしないぐらいでなるちゃんは戻ってきた。

 その手には、女の人向けのファッション雑誌があった。


「何、それ?」

 なんでいきなり雑誌なのか分からず、俺は首を傾げた。


「えっとね……確か……」

 なるちゃんは雑誌を開いてページを捲っていく。


「あ、あった。……これ!」

 開かれたページを、俺に見せる。


 そのページには、『この冬一押しのコスメ』と大きく書かれている。

 これを見せられても、俺には何のことかわからなかった。


「ここ! ここ見て」

 なるちゃんは雑誌の左ページを指さした。


 そこには色々な口紅の写真が載っている。


「沖田君、彼女さんのリップ折っちゃったんでしょ? だから、新しいのをプレゼントしたらどうかな? 日頃のお詫びとかも込めて」

 なるちゃんが言って、やっと理解できた。


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