ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~


「なるほど! いいな、それ!」


 俺は雑誌で口紅を見てみる。


 色んな種類があるんだな……

 口紅一本でこんなにあるということを、俺は初めて知った。


 あ、これナツが持ってたのと似てる。ていうか、多分これだ。


 見覚えがあるのを見つけて、俺はそれの横の文字を読む。なになに……


『色んなシチュエーションで使えるカラーが揃ったナントカ(多分ブランド名。ブランド名が英語だから読めない)は、超人気。特に一番人気のローズピンクはお店で売り切れのことが多いんだとか』


 ……へぇー……そうなんだ。


 あ、値段も書いてある。


「え!?」

 俺はそれを見て、目が飛び出すかと思った。


「く……口紅ってこんなに高いもんなの!?」


 ナツが持っていた、俺が今朝折ってしまった口紅の値段は、三千五百円もした。


「……ああ、これ? でも、こんなもんだよ。ブランドでも安いのだと千円しないのもあるけど。でもいいやつは大体それぐらいしちゃうかなー」

 なるちゃんがそう教えてくれた。


 ……知らなかった。


 だって口紅って消耗品だろ? それに百均でも売ってるの見たことあるし、絶対こんなにはしないと思ってた。


 こんなに高いのを、俺は折っちゃったんだ。


「はぁ……」


「ほら、元気出して! 選ぶんでしょっ」


 あ、そうだった。落ち込んでる場合じゃない。なるちゃんに励まされて俺は雑誌に目を戻す。


「これ、彼女が持ってるのと同じなんだ」

 俺はそれを指さしてなるちゃんに言った。


「あ、そうなんだ。じゃあ、これにするの?」


「……うーん」

 俺は雑誌を置いて悩んだ。

< 150 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop