ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

 ……これは形が絶対ナツの好みじゃないし。これは俺的に微妙だな。


 あ、でも、化粧品は見た目ってあんまり関係ないよな。使ったら一緒なんだし。

 ナツってどういう基準で化粧品選んでるんだ?


 案外俺はナツのことを分かってないのかもしれない。でも、こんなことまで普通は知らないよな?

 ちょっと不安になった。


『CMでも話題の新商品』


 ふとその文字に目がいった。


「あ」


 その口紅を見た瞬間、ピンときた。

 これなら、ナツは好きかもしれない。

 細くて、黒に金色の模様がはいっている。


「いいのあった?」


「うん。これ」

 俺はなるちゃんにそれを指さして教えた。


「あ、これ? CMでやってるよね」


「そうなの?」


「え、見たことない?」


「いやー? あんのかなぁ」


 雑誌にも書いてるけど、俺は普段口紅のCMなんて特に気にして見ないから、見たことがあっても思いつかなかった。


「これって、落ちにくくっていいんだって。友達が使ってるんだけど、ご飯の後も塗り直しとかしなくてもいいから楽だって言ってたよ」


「へぇ……そうなんだ」


 塗り直ししなくてもいいのか。


 そう言えば、今朝、キスした後にナツ、塗り直そうとしてたっけ。それで俺がふざけたから……


「決めた! これにする!」


 俺がこれをあげて、ナツがこれを気に入ってくれたら、もう同じようなことにならないですむだろうから。ナツを嫌な思いにさせることも少なくなるだろうから。だからこれにする。


「うん。いいんじゃないかな。じゃ、このページあげるね」

 なるちゃんは俺が選んだ口紅が載っているページをビリビリと破いている。


「え? いいの?」


「うん。いいよ。もうこのページは見ないから。はい」

 なるちゃんは破いたページを俺に渡してくれた。


「ありがとう。なるちゃん」


「どういたしまして。頑張ってね、沖田君」


 なるちゃんは笑顔で応援してくれてる。うん。頑張らないとな!

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