ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「お疲れでしたー」
五時にバイトを上がって、俺はカフェを後にした。
今日は、これからまだ居酒屋の方でバイトがある。六時からだから、このままゆっくり行っても十分間に合う。
居酒屋に向かいながら、俺は悩んでいた。
さっき気付いたけど、俺がナツにあげようと決めた口紅も、そこそこ高い値段だった。ていうか、正直ナツが持ってたやつよりも高かった。
どうすっかなぁ……給料日、まだ先だから金ないし……すぐに買えないぞ。
いや、急ぐ必要はないのか。別に誕生日とかのプレゼントってわけではないし、いつまでにって決まってるわけじゃないもんな。暫くちょこちょこと金貯めて……
いやいや、んなこと言ってたら、絶対、今更? って時期になるよな。それじゃあ、意味ないだろ。
じゃあ、いつにしよう。ナツの誕生日はまだまだ先だしなぁ……
俺は色々考えて、頭の中にカレンダーを思い浮かべる。
……あ。三月十四日。ホワイトデー。
そうだ! その日だ! 今月のバレンタインにナツからチョコもらう(予定)だし、そのお返しだったらなんの違和感もなく渡せるし、来月までには何とか金貯められるだろうし。
決めた! ホワイトデーだ! それまでにいつもよりは多目にバイト入って……うん! いける!
ナツのために、いつもろくに働かせない頭を働かせる。それはすごく楽しいから、全然苦じゃない。
頭の中がナツでいっぱいだと、すごく幸せ。ていうか、いつも俺の頭の中はナツで一杯だけど。
あ。
人ごみの中で、『いいもの』を見つけた。それに向かって俺は走った。