ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「ナーッちゃんっ♪」

 俺はすぐに『いいもの』に抱きついた。
 それは、勿論、ナツだ。俺の少し前を歩いてるのを見つけたから、追いかけてきた。

「旬!?」
 ナツはすぐに俺の名前を呼んだ。

「当たり~♪」

 すぐに俺と分かってくれるのが、すごく嬉しい。
 まあ、こんなことしていいのも、できるのも俺だけだけど。

「もうっ……旬!」

 ナツは顔だけをこっちに向けていつもの様子だ。


 よかった。今朝のこと気にしてないみたいで。

 俺は無意識に顔を緩めて笑った。


「ナ~ツ~。こんなところで会うとか嬉し~」

 俺はその嬉しさを表現してナツのことをもっと抱き締めた。


「もうっ……恥ずかしいから離して」

 ナツは恥ずかしがって俺の腕を解く。

「旬……誰か確認しないでいきなり飛び付くのはやめてっていつも言ってるでしょ。間違ってたら変質者になるじゃない」


 ああ、やっぱりこういう怒った風な顔は可愛いなぁ……


「俺がナツのこと間違えるわけないじゃ~ん」


 なぜなら、ナツは輝いているから。だから、人ごみの中でも、後姿でも分かるんだ。


「ナツ、何してんの? 帰るところ?」


「うん。旬は?」


「俺はバイト。途中まで一緒に行こっ」


 俺は手を繋ごうとナツの手に触った。


「うわっ。ナツ、手ぇ冷た!」

 予想外にひやっとして俺はビックリした。


 そういえば、ナツはこの時期、手足がすぐ冷えるって言ってたっけ。


「じゃあ……」

 俺はいつものようにナツの指に俺の指を絡めて繋いで、俺が着ているダウンのポケットの中に入れた。

 ナツの手は小さいから、すっぽりと収まった。


「これでよし! あったかい?」

 俺が聞くと、


「うん……あったかい」

 ナツはそう頷いた。うん! よかった!


 俺は多分、ナツがいないとダメなんだろうな。ナツがいなかったら、幸せにはなれないんだ。

 ナツと手を繋ぐ、たったこれだけでも、幸せになれるんだから。

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