ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「……ありがとう」
でもナツは、その口紅を大事そうに握りしめてそう言ってくれた。
「へへっ。どういたしまして」
よかった……気にいってくれたみたいだ。
俺はほっとしながらココアを飲んだ。
「俺さぁ…あの時、ぶっちゃけ嬉しかったんだ。ナツが俺のこと心配してくれてたこととか……ナツが言ったこと」
『――これじゃあ、あたしばっかりが旬のこと好きなだけみたい……』
「え……?」
「何か……初めてだったからさ。ナツがはっきり俺のこと心配してたとか、好きだって言ってくれたの」
ほっとしたついでに、俺は本音を口にした。
「俺……ちょっと不安だったから……。いつも、俺だけがナツのこと好きだって言って、俺だけがナツのこと好きなんだと思ってた……。ナツが俺のことどう思ってるか、自信なかったんだ。付き合い始めたのも、何だかんだ言って、俺が無理矢理ってとこもあったし……ナツは優しいから、別れようとか言えなかったりしたのかなって思ったり? ……だったから、嬉しかったんだ」
今回のことで、初めてナツからそんなことが聞けた。だからよかった。
「あ! でも別にナツに言われたのに懲りてないわけじゃないから! 後でメチャクチャ後悔したし!」
こんな言い方をしてナツに誤解されたら嫌だから、俺は慌ててフォローした。
そしてふとナツのことを見てみると……ナツの目から涙が零れていた。
「え……ナツ?」
俺が驚いて声をかけると、ナツは下を向いてしまった。
ポタポタとナツの涙が落ちている。
「ナツ? ごめん! 俺、また変なこと言った?」
物凄く焦った。俺は気付かないうちにナツを傷つけるようなことを言ってしまったんだろうか……
俺は下を向くナツの顔を覗き込もうとした。
その時、いきなりナツが動いて、俺に抱きついてきた。
勢いが良くて、俺は慌てて後ろに手をついた。
「ナツ……?」
ちゃんとナツを受け止めたものの、何がおきたのか全く分からなかった。