ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「ナツ……どうした?」

 俺はとりあえずナツの背中に手を回した。

 抱きついてきたってことは、多分俺が変なこと言ったってわけじゃないと思う。


 でも、何でいきなりナツは泣いて、俺に抱きついてきたんだろう……?


「旬……ごめん。ごめんね……」

 俺の耳元で、涙声のナツがそう言った。


 何のごめん、なのか、俺には分からない。


 ナツに更にぎゅうっと抱き締められて、ナツの髪が俺の鼻にあたる。いつものナツの匂いだ。ナツのいい匂いは、シャンプーか何かだったってことを、俺はこの時初めて知った。


「ふえぇ……しゅっ、旬……ごめ……ごめんなさ、い……ごめんなさい……」

 ナツの涙声は更にひどくなって、ナツはまた謝ってきた。そして、そのまま泣いている。


 こんなナツ、初めてだ。


「ナツ? 何でナツが謝ってんの? つうか、何でそんなに泣いてんの?」

 俺は、何をしていいのか分からなくて、でもとりあえずナツが早く落ち着くように背中を撫でた。


「あっ、あたしも……不安……だった、の……」

 涙声のまま、ナツが言った。


「あ、あたし……何でっ……旬が…あたし、と付き合ってっ…るのか、分かんなく、て……あたしはっ……旬、より…四つも上っ、だし……旬は…む、胸のおっきい人……好き、だから…それだけしか、見てない、のかもって……思っ…たり、それに……ほ、本当に、旬は、あたしが、旬の身の回りのこと…全部してくれるからって、付き合ってるんじゃ…ないかって、本当に、思ったの……旬は、あたしじゃなくても…いいんじゃ、ないかって……あたしの代わりは、他にもいるんじゃないかって……そう思ったら、すごく……嫌だった」


 ナツが言うことを、俺は黙って聞いていた。


 そうか……ナツは、そういう風に思ってたんだ。ナツはナツで、ずっと不安だったんだ。

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