ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「……っく……旬……」

 俺の腕の中で、またナツが泣き始めた。


「えっ……!? 何でそこで泣くの!?」

 何でまたこのタイミングで……俺、特に何も言ってないのに……


「ナツ~、泣きやめ~?」

 俺は、腕を緩めて、両手でナツの顔を挟んだ。


 俺がナツのほっぺたを撫でても、ナツは下を向いたまま泣いている。


「ナツ。俺、ナツは笑ってる時の方が好きだよ?だから、笑って?」

 俺はちょっと無理矢理ナツの顔を上げた。


 ナツは、目を真っ赤にしていて、その周りの化粧が落ちて、黒くなっていた。


「……やっぱ泣いてるとこもめちゃくちゃ可愛い」

 思わず笑いながら言ってしまった。


 でも本当のことだ。ナツは泣き顔まで可愛い。


 そしたら、ナツが吹き出した。


「もうっ……何言ってんの」

 ナツはいつも通りにそう言った。


「あ、やっぱナツはそうじゃないとな」

 まだ少し泣いていたけど、でも、ちゃんといつも通りのナツに戻ってる。


「メイク、落とさないと」

 指で目元を擦って、ナツが言った。


 そして俺の腕の中から抜けていって、俺に背中を向けて、ティッシュで拭いている。



 これで、もう今まで通り。いや、今までよりナツとのラブラブ度が増したかな?


 そう思って気を抜いた瞬間だった。


 ぐるきゅるるぅ~~……


 いきなり俺の腹が主張を始めた。


 俺は慌てて腹を押さえた。


 ナツが俺の方を振り返る。


「ハハッ……そう言えば俺、まだ晩飯食べてなかった。気が抜けたらつい鳴っちまった」

 そう言って誤魔化そうとしたものの、物凄く恥ずかしかった。

 何でこのタイミングで鳴るんだよ、俺の腹……


 ナツにも少し笑われてしまった。
< 189 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop