ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「……旬、何食べたい? 出来るものならすぐ作るから」

 ナツは俺の方に向き直りながらそう言ってくれた。


「ん~……じゃあ……」

 何を食べたいか、それを考えながらナツを見ていたら、ほんのいたずら心がうずいた。


「ナツ食べたいなぁ……」

 もちろん、それも嘘じゃないけど。でも、軽い冗談のつもりだった。


 こう言ったら、きっとナツは真っ赤になって『もう…何言ってんの』って言うだろう。

 そう思っていた。

「……なーんて。……え?」


 ナツが、笑った俺の唇を触っている。まさか、こうなるなんて、全く思ってなかった。


「ナ……ナツ?」

 俺はただ驚くだけで、何もできなかった。


 ナツの顔が、どんどん俺の顔に近付いてくる。


「いいよ。食べても…」


 ナツの息がかかったと思った瞬間、俺の唇は、ナツの唇に塞がれてしまった。


 二度目だった。ナツからキスをされたのは……


 ナツに初めて会って、ナツと初めてセックスした、あの夜以来で……俺は今回もあの時と同じように、目を閉じることを忘れて、俺の口の中に忍びこんだナツの舌に、されるがままになってしまった。


 唇が離れてからも、俺は動けないままだった。


 情けないことに、ただ動揺してどうしたらいいか分からなかった。気持ちとしては、見てはいけないものを見てしまった感じだった。


 前にキスされた時のナツは大胆だったけど、それは酔ってたからだと思ってた。普段のナツは、そんなことしないから。

 でも、今はシラフのはずのナツも、同じようなことをした。


 ど、ど……どういうことだ?どっちが本当のナツなんだ?

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