ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
俺は体を起こし、電話を耳から離して見た。俺が出たのは、ナツのケータイだ。画面の着信は、『三枝カオル』になっている。
でも、電話の向こうの声は、間違いなくそのナツ本人のものだった。
「もしもし……もしもし……?」
「あっ……ごめん、ナツ」
俺は慌ててケータイを耳に戻す。
「え……? えっと、誰ですか?」
ナツの混乱したような声が聞こえる。
あ、そうだ。ナツには俺だって分かってないんだ。
「俺。旬だよ」
「え……あ……朝、の?」
ナツの声は探り探りな様子だった。
やっぱりまだ付き合い始めだし、しょうがないか。
「うん。そう。で、ナツ。ケータイ落として行っただろ~」
俺は、とにかくナツとまた話せたのが嬉しくて、口が勝手に動くぐらいの勢いで、ナツに話し掛けた。
「あ、やっぱり落としてたんだ……どこに落ちてたの?」
ナツが俺の言ったことに食いつくような反応でそれだけで嬉しかった。
自分のケータイのことだから、当たり前だけど。
「ホテルの部屋の電話台んとこ。多分、ナツが財布出した時にでも落ちたんだよ」
「そっか……」
「なぁ、ナツ。今どこにいる?」
「え……会社だけど……」
「どこの? 俺、届けに行くよ」
もちろん、これはナツに会いたいってだけの口実だ。
まぁ、どっちにしろ会わないといけないし。
「え……いいよっ! 一応まだ仕事中だし……」
「じゃあナツの仕事終わったぐらいに行くよ」
「でも……」
気を遣ってるのか、ナツはなかなかうんと言ってくれない。
「いいって、全然。俺、暇だし。ていうか、俺が会いに行きたいんだ。ナツに。それじゃだめ?」
正直、ケータイを届けるってことより、そっちの方が重要だから、俺は素直にそう言った。