ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「えっ……」

 ナツは驚いたような声だった。


「だめ?」


「そういうわけじゃ……」


「じゃあ、いい?」


「う……うん」


「やった! んじゃどこ行けばいい?」


「えっと…会社は○○ってとこ。××町のところなんだけど分かる?」


 ××町……あのへんか。家からそんな遠くないな。


「うん。分かった!何時頃終わる?」


「五時ぐらい……」


「オッケー! んじゃ会社の前で待ってるな!」


「うん……あ、そろそろ戻らないと」


「あ…そっか……」

 せっかく連絡できたから、本当はもっと話したいけど、我慢しないとしょうがない。


「じゃあ、仕事頑張って。また後でな」


「うん。また……」


 電話を切って、時計を見ると一時前だった。

 まだ四時間もある。早く会いたいな。

 その時ちょうど、腹の虫が鳴ったから、俺はとりあえず昼飯を食べにリビングへと行った。



 今、四時二十七分。

 俺は、ナツの会社の真ん前にいる。


 本当は五時十分前ぐらいにここに着けばちょうどいいぐらいだけど、それまですることが無さ過ぎて、早くに家を出てしまった。


 ていうか、ナツに会いたいと思ったらいてもたってもいられなかったんだ。

 まあ、俺が早く来たってしょうがないのは分かってるけど。


 本当に、こういう時の時間が経つのは遅い。さっきから、二分に一度ケータイで時間を見てる。


 待ちきれなくて、中に入ってみようかと思ったけど、警備員らしき人がいて(しかもかなり顔が恐い)、社員証かなんかがないと入れないっぽいから、近寄るに近寄れない。

 そもそも入っちゃいけないのは分かってるけど。


 俺は、会社の前の歩道と車道を区切るガードレールにもたれかかって、時間が過ぎるのを待った。


 それにしても……でっかい会社だなぁ。


 俺は目の前のビルを見上げて思った。

 よく考えたら、○○社って聞いたことあったかも……俺でもきいたことあるんなら、結構有名ってことだよな。


 ナツってこんなすごいトコで働いてんの?

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