ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~


「あっ……」

 色々考えてるうちに、やっと時間が過ぎてくれたらしい。

 会社の中に、歩いているナツを見付けた。


 ナツは、早足で歩いて出入り口に向かっている。俺もそれに合わせて、ガードレールから離れて、ビルに近寄った。


「ナツ!」

 ナツが出てきたと同時に俺はナツを呼んだ。

 ナツは、すぐに反応して俺の方に向いた。


「仕事お疲れ!」


「あ…うん」

 ナツの目の前に立ってそう言った俺に対して、ナツは少し緊張した表情だ。


「あ、そうだ。はい。ケータイ」

 俺はGパンのポケットからナツのケータイを出して、ナツに差し出した。


「あ、ありがとう」

 ナツはケータイを受け取る。


「何か、ごめんね? わざわざ来て貰っちゃって……」

 ナツは俺の顔を見上げてそう言った。


 その顔が可愛くて、俺はときめいた。


「ううん! 全然! 言ったろ? 俺、暇だから」

 思わず興奮して、声が強くなってしまう。


「それより、ナツ。今日はもう帰るの?」


「うん。そうだけど……」


「じゃあ、送ってくよ」


「えっ……そんな…いいよっ! わざわざここまで来て貰ってるのに、そこまで……」

 ナツは首と手を横に振って断ってきた。


 軽くショックを受けた。

 一応、付き合い始めたはずなのに、やっぱり、ナツはちょっと遠慮ぎみな感じだ。

 それでも、ここで引いたら負けだ。


「送るよ。もう暗いんだから女の人は危ないし。…ていうか、俺が送りたいだけだけどさ」

 俺は気持ちだけほんの少し強めにそう言った。


「…………じゃあ……うん。お願いしよう……かな」


 ナツは、急に下を向いて、小さくそう答えた。


 よし!と、俺は心の中でガッツポーズをした。

< 27 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop