ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「ふーん。奈津美ってそんなに押しに弱いんだ。断れないような状態だったら、誰にでもOKしちゃうの」


「違うわよ! そんな人聞きの悪いこと言わないでよ!」

 あたしは、カオルの言うことに猛否定した。

 そりゃ確かに、押しに弱いことは認めるけど……


「だったら何?」


「何って……その、あたしは連絡先とかも知らないわけで……」


 そう言うと、カオルにため息をつかれた。


「奈津美……百歩譲って断れないにしても普通さぁ、相手の名前と連絡先くらい聞くでしょ」


 カオルの言うことは尤もだ。尤もすぎる。


「でも……一回聞いたのに名乗らなかったのは向こうだし(昨夜聞いたらしいのに忘れてるのはあたしだけど)、向こうだって連絡先とか聞いてこなかったし……」

 言い訳かもしれないけど、これだって事実。あたしだけが悪いんじゃない。


「それもそうかもしれないけど……どうすんの?」


「どうって……どうしようもないし……」


「あ、居酒屋の店員なんでしょ? そこに行ったら会えるんじゃない?」


「いっ嫌! 絶っ対、嫌!」

 カオルの発言に、あたしは首を思い切り横に振った。


「あたし昨日、酷い酔いつぶれ方したのよ!? 他の店員とかにも覚えられてるだろうし…店長なんか顔見知りなのよ!? 行けるわけないじゃない!」

 あの店には、もう二度と行かない。そう決めたのに……わざわざ行きたくなんてない。

「じゃあ、どうすんの?」

 もう何度目かのカオルの問い……

 やっぱり、あたしの口から出る言葉はない。


 だって、本当にどうしようもない。

 そりゃ、あたしが意地を張らないで店に行けば早い話だけど……正直、そこまで執着してるわけでもない。恥を忍んでまで、行きたくなんてない。

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