ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「もう忘れる! 犬に噛まれたと思って忘れる!」

 あたしはそう断言した。


 そうだ。くよくよ考えるからどうしようもなくなるのよ。


「ふーん」

 カオルは訝しげな顔になった。


 言いたいことは痛いほどに伝わってくる。


 あたしは手持ち無沙汰になって、椅子の後ろに置いていた鞄を膝の上に置いて中身を漁った。


「何か相手の人カワイソー」


 カオルは横から色々と言ってきたけど、あたしは気にしないフリをして鞄の中をいじる。


「あれ……?」


 特に意識もせずに鞄を漁っていたけれど、途中で何かたりないことに気付いた。


 財布に、ポーチでしょ? 手帳に、鍵もあって……あれ?


 いつもあるはずのものが、見当たらない。

 あたしは、行儀が悪いとも思いながら、テーブルの上に鞄の中身を出していく。


「どうしたの?」

 突然のあたしの行動に、カオルは首を傾げている。


 あたしは鞄の中身を全部出して、頭の血が引くのを感じた。


「……ない! どうしようっ…携帯なくした!」


 中身を全部出した鞄の中には、あるはずの携帯はなかった。


「落としたの?」


「多分……どこか分かんないけど……」

< 38 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop