ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

 あたしは焦って記憶を辿る。


 最後に携帯出したのいつだっけ……

 昨日……居酒屋入った時まではあったはず。そこからは、記憶ないし……


 落としたとしたら、居酒屋の中? ……ホテル? 朝のタクシー? それともどこか道の途中かもしれないし……


「どうしよう……」

 何にしても、あたしは途方に暮れるしかなかった。


「かけてみたら? あたしの携帯貸すから。誰かいい人が拾ってたらどっかに届いてるでしょ」

 カオルがそう言って携帯を差し出してくれた。


「あ、ありがとう」


「あたし的には拾ったのが相手の人っていうのを願ってるけどね。それか、居酒屋に落としたのが届いてるか」

 携帯を受け取ると、カオルは嫌なことを言った。


「……電話したくなくなるようなこと言わないで」


 そう言いながらも、結局携帯がないと困るだけだから、少し緊張しながら、あたしは自分の携帯にかけた。





「はい?」


 三回目のコール音が鳴ったとほぼ同時に、相手が出た。

 ちょっと太い感じの、男の声だった。


「あの…その携帯を落とした者なんですけど……」


 誰か分からない相手にそう告げると、何の返事もない。


「もしもし……もしもし……?」


「あっ……ごめん、ナツ」


「え……?」


 やっと声が返ってきたと思ったら、馴れ馴れしくあだ名で呼ばれた。


 何となく、聞き覚えのあるような……


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