ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「えっと、誰ですか?」
失礼だとも思いながらそう尋ねた。
「俺。シュンだよ」
「え……」
あたしの知り合いに、シュンなんて男は居ない。
その時、頭に過ぎったのは、朝の出来事だった。
「あ……朝、の?」
あたしは一か八かでそう尋ねてみる。
「うん、そう。で、ナツ。ケータイ落として行っただろ~」
なんて偶然なんだろう……
あたしの携帯を拾ってくれたのが朝の人で安心したような、そうでもないような……
ていうか、カオルの言った通りになってるし……
「あ、やっぱり落としてたんだ……どこに落ちてたの?」
頭の片隅では少し違うことを考えながら、あたしは彼に尋ねた。
「ホテルの部屋の電話台んとこ。多分、ナツが財布出した時にでも落ちたんだよ」
「そっか……」
あの時か……
急いでたから気づかなかったんだ。
「なぁ、ナツ。今どこにいる?」
「え……会社だけど……」
いきなり聞かれ、あたしはとっさに答える。
「どこの? 俺、届けに行くよ」
そのいきなりの発言に、あたしは驚いた。
「え……いいよっ! 一応まだ仕事中だし……」
まさかそこまで言われるとは思わなくて、あたしは何故か焦りながらそう言った。
電話だから別に必要もないのに、首も思い切り横に振っていた。
「じゃあナツの仕事終わったぐらいに行くよ」
「でも……」
こんないきなり会うなんて、何となく会いづらいと言うか、なんというか……
「いいって、全然。俺、暇だし。ていうか、俺が会いに行きたいんだ。ナツに。それじゃだめ?」
「えっ……」
さらりと言われた言葉に、あたしは言葉を失った。