ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

「えっと、誰ですか?」

 失礼だとも思いながらそう尋ねた。

「俺。シュンだよ」

「え……」

 あたしの知り合いに、シュンなんて男は居ない。

 その時、頭に過ぎったのは、朝の出来事だった。

「あ……朝、の?」
 あたしは一か八かでそう尋ねてみる。

「うん、そう。で、ナツ。ケータイ落として行っただろ~」

 なんて偶然なんだろう……

 あたしの携帯を拾ってくれたのが朝の人で安心したような、そうでもないような……

 ていうか、カオルの言った通りになってるし……

「あ、やっぱり落としてたんだ……どこに落ちてたの?」
 頭の片隅では少し違うことを考えながら、あたしは彼に尋ねた。

「ホテルの部屋の電話台んとこ。多分、ナツが財布出した時にでも落ちたんだよ」

「そっか……」

 あの時か……
 急いでたから気づかなかったんだ。


「なぁ、ナツ。今どこにいる?」


「え……会社だけど……」

 いきなり聞かれ、あたしはとっさに答える。


「どこの? 俺、届けに行くよ」


 そのいきなりの発言に、あたしは驚いた。


「え……いいよっ! 一応まだ仕事中だし……」

 まさかそこまで言われるとは思わなくて、あたしは何故か焦りながらそう言った。

 電話だから別に必要もないのに、首も思い切り横に振っていた。


「じゃあナツの仕事終わったぐらいに行くよ」


「でも……」


 こんないきなり会うなんて、何となく会いづらいと言うか、なんというか……


「いいって、全然。俺、暇だし。ていうか、俺が会いに行きたいんだ。ナツに。それじゃだめ?」


「えっ……」


 さらりと言われた言葉に、あたしは言葉を失った。

< 40 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop