ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
何でこういう時は時間が過ぎるのが早く感じるんだろう……
いつもはやたらと長く感じるのに。
時計を見ると、五時六分。もう来てるんだろうな……
エレベーターで一階に降りながら、あたしは数え切れないくらいため息をついた。
カオルに、これから会うのだと言ったら、『何そんなにのんびりしてるのよ』と、急かされた。
そして、ロッカールームを出る時に『しっかりね!』と、激励(?)された。
一体何をどうしてしっかりすればいいのか……それを教えて欲しかった。
でも何にしても、あたしの携帯を持ってるのは向こうだから、いづれ会わないといけない。
……そうだ。別に携帯を受け取るだけなんだから、こんなに憂鬱になる必要なんてないんじゃない。
別に相手を意識しなければ大丈夫。気まずいのは我慢すればいい。
そう思いながらあたしはエレベーターを降り、正面玄関に向かった。
「ナツ!」
外に出たのと同時に、その声が聞こえた。
朝に、そして昼に電話で聞いた声……
あたしは声のした方に向いた。
「仕事お疲れ!」
予想通りの声の主、シュン君は、あたしの目の前に駆け寄ってきた。
「あ……うん」
ちゃんと気合いは入れたものの、やっぱり緊張して、あたしはただ頷くことしかできなかった。
「あ、そうだ。はい。ケータイ」
すぐにシュン君はそう言って携帯を取り出して、あたしにに差し出してくれた。
「あ、ありがとう」
あたしは、それを受け取りながらお礼を言った。
「何か、ごめんね? わざわざ来て貰っちゃって……」
そう言いながら、シュン君を見上げてみると、意外と背が高いことに気がついた。