ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
「でもナツってすげーよなぁ。○○社っていったら結構有名じゃん。そんなとこで働いてるとかビックリした」
あたしの思っていることをよそに、シュン君は違う話題を口にする。
別に年のことは何も思ってないみたいで、あたしはほっとしながらシュン君が言ったことに答える。
「ううん。そんな、すごいって言えるほどのことはないよ。○○って、すごいのは本社だけだから。うちの会社は支社だし……それにあたしだって事務の仕事だから雑用ばっかで全然大したことないの」
確かに、うちの会社はネームバリューはあるみたいだけど、給料は月並みだし、他は知らないけど、仕事の内容だって、誰だってできるようなことだし……
「あっ!」
そこでいきなりシュン君が叫んであたしは驚いた。
「どうしたの?」
「こんなとこで悪いけど、俺、ナツに金返そうと思ってたんだ」
「お金……?」
返す……?
何のことか分からなくてあたしは首を傾げた。
「ナツ、今朝二万も置いてっただろ? 俺、半分出したから、その残り」
シュン君は財布を取り出しながらそう言った。
「あ…ああ……」
それか。そういえばあたし、適当にお金置いて来たんだった。まさか、二万も置いて行ってたなんて……
「はい」
「ありがとう」
あたしはシュン君に渡されたお金を受け取って鞄の中から財布を取り出した。
正直、朝にタクシー使ったおかげで少しピンチだったから、返してもらえて助かった。