ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

 そう言えば……

 財布にお金をしまいながら、あたしはまたあることが頭に浮かぶ。


「ねぇ、シュン君」


「何!?」

 何故かシュン君の食いつきはやたらと早くて、ちょっとびっくりする。


「シュン君は、春から大学生?」

 頭に浮かんだその疑問をシュン君に言うと


「ううん。働く」

 即答で返ってきた。


「一応受験はしてたんだけど、全部落ちたからさ。浪人とかしてたら金かかるし」

 シュン君は続けてそう言った。


「そっかぁ……」

 もう四年も前のことだけど、あたしが高校生の時も確かにそういう人が何人かいた気がする。

 進路指導の時も、先生がそんなことを言っていた。

 浪人しても、よくて今の学力キープが精一杯で、それで予備校の授業料とかで、結局は大学の約一年分の授業料がかかるって……


「あ……旬君」

 あたしはふとしたことを思い出し、再びシュン君に話し掛けた。


「なになに?」

 今度の食い付きは、慣れたせいか驚かなかった。


「あの…変なこと聞くけど……お昼に、あたし電話したじゃない? あたしのケータイに。その時、あたし友達のケータイからかけたんだけど……何であたしだって分かったの?」


 お昼から、少し気になっていたことだ。あの時、何の躊躇いもなく、シュン君はあたしの名前を呼んだ。

 初めて電話を通して話したはずなのに……

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