ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~
そんないい感じの雰囲気を、ケータイ着メロがぶち壊した。
「あ……俺だ」
Gパンのポケットの中で震えていたからすぐに分かった。
この着メロは、電話の方だ。
こんな時に誰だよ…と思いながら、俺はケータイを取り出して、サブ画面を見た。
表示されているのは、バイト先(カフェ)の先輩だった。今日、ナツとのデートのために、俺と日にちを変えてもらった人だ。
「ごめん、出ていい? バイト先の先輩からなんだ」
しょうがなくナツにそう聞いた。
「うん」
「ごめんな」
頷いたナツに、もう一度謝ってから、俺は電話に出た。
「もしもし?」
「沖田か? 悪いけど、今日はバイト無理になった」
「えっ!?」
先輩の言葉に俺は思わずでかい声をだしてしまった。
「だからお前行け。店長にもそう言っといたから」
「そんな……先輩! 俺だって無理っすよ!」
俺は必死に言い返した。
今、ナツとめちゃくちゃいい感じになってるのにバイトなんて冗談じゃない! 絶対に嫌だ!
「無理じゃねえだろ。元はと言えばなぁ、お前がシフトも確認せずに彼女と約束したとか勝手なこと言ったんだろ。それをお前が俺に『このデートに懸けてる』とか言って土下座までしたからこっちだって出来る限りで予定変えてやろうとしたんだろうが。それが無理なんだからしょうがねえだろ」
返す言葉がなかった。全部本当のことだ。
でも、それだけ本当にナツとのデートに懸けてたし、それに、こっちから誘っておいて勝手に無理になったとか言えないし…
「そういうわけだから。ちゃんと行けよ! じゃあな」
「ちょっと……待っ……」
耳に返ってきたのは、ツー、ツーという音だった。