ダメ男依存症候群 ~俺は彼女に中毒症状~

 今日は、買い物も食事も、全部ナツが俺に合わせてくれたんだ。ナツは、笑ってくれてはいたけど、もしかしたらつまらないと思ったかもしれない。


 それでも俺は、ナツのおかげで今日は楽しかったんだ。


「あ……あたしもっ」

 ナツは、そう声にしてから俯いた。


「あたしも……今日、楽しかった、よ……」

 俯いたまま、恥ずかしそうに小さな声で、そう続いた。


 その言葉とその様子が、とても可愛くて、とても嬉しかった。


 ナツも、俺との時間を、楽しいと言ってくれた。たったそれだけなのに、もうこのまま死ぬんじゃないかってぐらいに、嬉しかった。



「また……また行こうな! 今度、ちゃんと埋め合わせするから!」

 俺がそう言うと、ナツは顔を上げて、笑って、


「うん」

 と、頷いた。


 それだけでまた幸せになった。


「それじゃ、終わったらまた電話するな」


「うん。待ってる。……旬君、バイト頑張ってね」


 さり気なく、俺からの電話を『待ってる』と言ってくれたこと、ナツが『頑張ってね』と言ってくれたこと。それだけが俺のやる気になった。



「あ」


 頭の中で、ナツのセリフを繰り返して、一つだけ引っ掛かった。


「ナツ。俺のこと、次からは旬って呼んで」


 ナツは、ずっと俺のことを君づけで呼んでいた。あの日の夜は、呼び捨てだったのに、その時のことを覚えてないからか、ずっと呼んでくれそうにはなかった。


 本当は、もっと近い感じで呼んで欲しかったんだ。

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